2017年4月4日(火)-4月16日(日) ※4/10(月)休廊
〈2F〉 川村 悦子 (平面) × 松本 ヒデオ (陶)
「さくら咲く」川村悦子
家の庭にしだれ桜を植えて8年が経つ。すくすく伸びて満開の桜が開花するのを楽しんでいたある夏、日照が厳しいのかてっぺんから一気に枯れ出し不細工な形になった。以来害虫を摘み、水遣りにも精を出して熱心な桜守りとなっている。節分前の寒い頃に小さな芽を出し、強風に枝が撓いながら春を待つ姿に頑張れと声を掛ける時、私と桜には一種運命共同体のような近しさを感じる。開花した姿形に絢爛さはないけれど、咲いたよと告げるしおらしさに顔が綻び、今年もまた春の到来を寿げる自分を幸せに思う。植物を育てることと絵を描くことは似ている。一気呵成に描けない私には葉の一枚一枚に手間がかかる。その愚鈍な手法にうんざりしながらも画面に薄桃色の色彩が表れると心が踊り、いかにも花咲か婆になった気分でルンルンと鼻歌が出る。我が家のしだれ桜でお祝いを!
1980年京都市立芸術大学専攻科修了。初期の「曇りガラス」シリーズや「蓮」シリーズ、また近年の日常に身近に出会う草花や風景を描いた油彩画による個展「ありふれた季節」を西宮市大谷記念美術館にて昨年開催。現在、京都造形芸術大学教授。
「仮設の庭」松本ヒデオ
祝いの言葉の形が集められ、ブリコラージュされる「ハレ」の飾り。簡易に組み立て、かたづけられ、軽やかに祝い、速やかに日常に戻る仮設の美学。京都東山のふもとの春を祝う飾りものとして、桜を賞でる仮設の庭をつくる。「維摩はん、こんにちは。入ってもよろしおますか?」「よう来てくれはったな。入って入って。」客が次から次へと維摩居士を訪ねてくる。今日の菩薩、声聞さんたちの来客はこれで8500人目。しかし、この維摩居士(ゆいまこじ)の居室はたった一辺一丈(3m)四方の空間。無限の受容力を持つ室は方丈と呼ばれ、この閉じられた空間に全宇宙が存在するという精神は「つぼ庭」へと繋がっている。「ハレ」の飾り。仮設の庭。
1982年京都市立芸術大学大学院修了。古典的陶磁器からのイメージをベースに「水の境界・表層」「囲み取って賞でる」「ディテールの連鎖」等のテーマで制作。滋賀県立陶芸の森・国立国際美術館・東京国立近代美術館等で発表。